オタ産業の節度のなさ
韓国のマンガ配信サイトで連載されてるエジプト神話をネタにしたBLマンガ『ENNEAD/エネアド』のブログに載せようと思って書いたのですが読み返したら、『ENNEAD/エネアド』からあまりに遠く離れた内容のため、こっちに持ってきました。
神様の女体化問題
異国の神や伝説の英雄をゲームに登場させたりキャラにするのは昔からあるあるなのでいいとしても(本当にいいと思われてるかは知らんけど)、異国の文化を借りる以上、キャラデザなりキャラ付けなりは、元ネタにいくらかはリスペクトすべきだと思っているんですが、日本のオタ産業を見てると作り手が楽しければそれでいいといわんばかりに、その辺ガン無視してるのが目に余る件についてです。
例えば、歴史的の偉人や伝説の人物を英霊として召喚する某スマホゲームとか←。
皇帝ネロがよお
アーサー王女体化はまだ許せる。性格もかわいいし、実際の無駄な戦いを好まない、アーサー王に近い性格にもなってますし。元ネタのアーサー王伝説ですが、アーサー王の実在性は否定されてます。アーサー王伝説自体が中世に流行った騎士道ものの文学の一つと見なされていますから。
しかしなあ、ローマの皇帝ネロ。こいつの女体化はない。第一にローマはガチガチの男尊国家だから女性がトップになることを歴史上一度も許してないですし。この時点で女体化はねんだわ。
ネロはキリスト教を弾圧したから、キリスト教徒によって悪帝にされたと喚くFGO厨が必ずいるけど違うんで。
こいつは実母や身内の元老院の連中を殺しまくったから暴君扱いされたのです。もちろんキリスト教徒から見ても悪帝ですが、ローマから見ても立派な暴君だった。
それに、ネロは一方的に惚れた美少年を誘拐して、無理やり性転換させて愛人にするような皇帝なんすよ。普通にクソなのよ。だから女体化させられたんだよ。あれ?だったら問題ないじゃん……
西遊記の三蔵女体化問題
アニメ漫画ゲームだけでなく、海外の原作のキャラを女体化したがる(?)現象は今に始まったことではないんですよね。古くは「ガンダーラ」のドラマ西遊記もそーだった。
ガキの頃、元ネタの西遊記を知らずにドラマの再放送で見てたから三蔵はずっと女性だと思いこんでましたし。
もちろん実際は男性ですし、モデルとなった玄奘三蔵も男性です。ぶっちゃけ、三蔵を女体化させる理由が全く分からない。女体化させなくては成り立たない物語ではないから、誰がこんな悪趣味な設定に改変したんだと思います。
確かこれは本国でも問題視されて、近年(?)のリメイクドラマ「西遊記」でも三蔵を女性が演じたことから、猛抗議と猛反発を受けたんだよな。
西遊記には実在した高僧の玄奘三蔵が登場しますが、話の内容はもちろんフィクションです。
しかし、実際の玄奘三蔵が中国にもたらした功績はあまりに大きく、歴史的に国宝に値する人です。徳のある高僧を何の理由があって女体化したのか、まともな感覚なら普通やらないと思うんです。
中国は別に西遊記がパロディされたりエンタメにされたりすること自体は咎めてないと思います。
三蔵を女体化した実写ドラマが嫌いなだけであって、峰倉かずや先生の『最遊記』は長いこと人気があるし全然受け入れられてます。
中国にとっての西遊記とは京劇の演目であり、超有名古典文学であり、玄奘三蔵は仏教のルーツを中国にもたらした高僧で、色んな場面で大事にされてる作品だと分かります。
作品を借りるのなら最低限のリスペクトはしよーよってだけの話だと思います。
西遊記は、日本だと4人で西へ向かう旅の物語ですが、本編は4人の前世にあたる天界編と桃源郷に転生した4人の旅編と併せて、一つの作品と見なされています。どちらも欠けてはならず、どちらも人気があります。
日本では知名度が低すぎる前世にあたる天界編は、本国では大変人気があります。あの4人の前世は神さまで、三蔵も悟空も八戒や悟浄も転生前は天界人だったのです。
つまり、旅のラストは無事に役目を果たしたことで天界に戻ることができて、お終いです。
こちらの天界前世編も峰倉先生が『最遊記外伝』として脚色を加えたドラマチックな話にアレンジしてマンガ化してます。中国のファンを見ると、外伝のキャラ(前世の姿)が人気ある印象でした。
儒教が根強い中国では確かに男尊女卑社会ではありますが、西遊記の件に関しては問題の本質はジェンダーではなく、玄奘三蔵も西遊記も本国で大事にされてるからこそ、面白いからといった理由だけで、重要なキャラの性別をすげ替えるのはリスペクトがなさすぎではないか、だったら西遊記でやる必要はないよね、ということだと思います。